コミュニティマーケティングについて知る

第1章では、コミュニティマーケティングの概要についてお伝えしました。本章では実際のコミュニティマーケティングの成功事例を紹介し、さらにその魅力に迫っていきたいと思います。

2-1. JAWS-UG

クラウド業界で圧倒的シェアを誇るAWS(アマゾンウェブサービス)。全世界のクラウド市場の約3分の1を占め(*1)、パブリッククラウドの王者として君臨しています。今では国内のクラウドの利用も一般化してきましたが、それを牽引してきたのがAWSといっても過言ではないでしょう。
JAWS-UGは、そのAWSのユーザーたちが集まるコミュニティです。現在ではエリア別・目的別に50以上の支部を持ち、更なる拡大を続けています。

JAWS-UGとは、AWS (Amazon Web Services) が提供するクラウドコンピューティングを利用する人々の集まり(コミュニティ)です。
一人ではできない学びや交流を目的としてボランティアによる勉強会の開催や交流イベントなどを行なっています。
私たちは日本全国に「支部」の形でグループを持ち、それぞれのテーマに基づいて活動を行なっています。
このコミュニティーは、非営利目的で活動しています。
引用:https://jaws-ug.jp/about-us/

良質なコンテンツがコミュニティから生まれる好例

第1章にて、コミュニティとは「コンテンツクリエイター」「コンテンツエクスチェンジャー」「コンテンツアーカイブ」であると述べましたが、JAWS-UGはまさにその好例です。
JAWS-UGは先ほどご紹介したように、東京だけでなく日本全国に支部を持ち、それぞれが定期的に活動しています。そのため、ほぼ毎週日本のどこかでAWSのコミュニティイベントが開かれ、ユーザー同士が自主的にAWSについての生の声(=コンテンツ)を交換しあっていることになります。
オフラインだけではなく、オンラインにもコミュニティから発信される情報があります。Twitter上で #jawsug で検索をかければ常にデイリーでアクティブなつぶやきが見られますし、コミュニティ自体のWEBサイトもあります。

コミュニティが作り出すコンテンツ力の強さ

さらに、コンテンツという点においてJAWS-UGの特筆すべき点は、PC/IT関連のオンラインメディア「アスキー」上に JAWS-UG on ASCIIというページまで存在していることです。
実は、AWSの記事の中でもコミュニティ関連記事へのトラフィックがかなり高いことが分かったアスキー編集部が、コンテンツはコミュニティから生み出されるものを活用し、メディアとしては編集やキュレーションに集中するという姿勢で始めたのがJAWS-UG on ASCIIです。
たとえば、こちらの記事は、JAWS-UGの中でも特にネットワークに特化した勉強会のイベントレポートです。実際にAWSを利用する際の、ネットワーク周りに関する発表内容が多くの読者の関心を呼び、Facebook上で350以上シェアされています。そしてこちらの記事もイベントレポートですが、なんとこのイベントの企画・運営、記事内の写真撮影、記事の執筆までをJAWS-UGのメンバーで行なっており、コミュニティがコンテンツを生み出す究極の形態ともいえます。
JAWS-UG on ASCII上には、こういったJAWS-UGの活動やメンバーに焦点をあてたコンテンツがそろっていますが、だいたいの記事がSNS上で多くのシェアを獲得しています。

いわゆるコンテンツマーケティングにおいては、企業が自社のリソースを使ってコンテンツの企画・作成を行ったり、外部の専門業者にお金を払ってコンテンツを作ってもらうというケースもあると思います。それでもコンテンツがバイラルする保証はありません。
このJAWS-UGの例をみると、コミュニティの活動そのものが良質なコンテンツになりえること、コミュニティのメンバーがコンテンツを創出できることが分かります。また、コミュニティのメンバーはそもそも共通の課題意識や目的意識を持っている集まりなので、共感するポイントが似通っており、バイラルにも繋がりやすくなります。
まさにコミュニティからコンテンツが生まれ、コミュニティの中でコンテンツが交換、シェアされ、そしてアーカイブされていく一連の流れが体現されています。
これほどまでにユーザー目線で良質なコンテンツを企業の力だけで作ろうとするのは容易なことではありません。

ユーザーは何にドライブされているのか

コミュニティはベンダーにとってだけではなく、参加者にとっても大きなメリットがあるとお伝えしてきましたが、JAWS-UGの場合はどうでしょうか?
たとえば、AWSのビジネスパートナーの中でも最上位に位置するプレミアコンサルティングパートナーは、国内に7社(2017年)しかないわけですが、ここ3年連続でプレミアパートナーに位置するアイレット(cloudpack)社、サーバーワークス社、クラスメソッド社などは、JAWS-UGの立ち上げ時期から多くの社員がコミュニティ活動に貢献してきたことで知られています。つまり、コミュニティでのアウトプットが多い人や組織が、最終的にはビジネスの機会も多く得られるということを示しているわけです。この構図を理解すれば、むしろ企業が社員のコミュニティ参加に歯止めをかけるほうが非合理な判断といえるでしょう。
また組織としてではなく、個人としてコミュニティに貢献してきた人たちも、コミュニティ活動の中で得た知見や人脈を持って、自身の新たなキャリアを開き、転職に成功している人が多くいます。
このように、技術的な好奇心を満たすだけでなく、コミュニティの中でプレゼンスの向上が、個々人のビジネスやキャリアにとってもプラスになるということが、コミュニティに長く参加しつづけるうえでのモチベーションとなっているのです。

*1:https://www.srgresearch.com/articles/amazon-dominates-public-iaas-paas-ibm-leads-managed-private-cloud